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アニメ視聴記録

劇場版機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

※ネタバレあり

※1回しか見ていないので、正確ではない言及や表記が含まれる可能性があります

 

 

 

 

■総評

鑑賞直後は「SEEDシリーズでこんなに楽しいアニメを作って良かったんだ」と言葉を失った。

ガンダム最新作&同窓会作品として満点だと思う。意外性を織り交ぜつつSEEDとSEED DESTINYの諸要素を最新のアニメーションでもう一度見せてくれたという点で非の打ち所がない。

SEEDもSEED DESTINYも長所短所が極端な作品だと自分の中で位置づけているが、本作でその全てが肯定されたかのようにも思える。

本作を見終わった後は、SEEDやSEED DESTINYを見ていて良かったと初めて思った。

反対に、続編を20年間真剣に待ち望んだコアファンが見た場合は、ワチャワチャしているうちに終わってしまう物足りない内容だったのかなとも思う。

リブート作品として優秀な作品なので、またここからSEEDのTVシリーズが作られたら嬉しいなぁ。

 

■メカアクション

筆者が本作に対して第一に期待していたのがメカアクションだった。

ストーリーが好みじゃなくても、メカアクションが良ければそれだけで126分間見れるからね。

3DCGでロボットを描くことはかなり一般化しているが、メカアクションは未だ2次元的なことが多いように思える。『マジェスティックプリンス』は3DCGかつ奥行きのある3次元的なメカアクションをするアニメだった印象だが、同レベルのアニメは他に思いつかない。

そんななかで本作は『マジェスティックプリンス』以来に奥行きを意識させてくれるアクションアニメだった。

また現実感とファンタジー感が上手く配合された近接アクションは『コードギアス 亡国のアキト』の諸作品を見た時と同じ爽快感を感じた。

上記の要素は前半に集中していて、後半は射撃戦が多くなってしまったようにも思えるのだけれど実際どうなんでしょうね。

もう一回観に行って再確認したり、円盤買ってゆっくり正確に確認したいところ。

 

■戦艦アクション

鑑賞前には艦隊戦要素を期待も予想も全くしておらず、それゆえ度肝を抜かれたのが艦隊戦だった。

艦アクション要素のあるアニメは『はいふり』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』など時折見られるが、これまでちゃんとノレたことがなかった。ノレていなかったのは戦艦自体に興味も薄ければ、駆け引きを分かっていない筆者が原因なのではあるが。

しかしまず、本作ではとにかく爆炎が多く、単純に見た目が常に派手だ。

艦がぼぉっと映っているだけの場面が少なく、艦の周りでとりあえず何かが起こっていて退屈しない。

そして時間経過するほど艦の見た目が変化していくのも良い。

さらに後半になると「そんな仕組みの兵器がを出すんだ……?」となるような攻撃手段も出してきて、手品ショーを見てるような手数の多さが楽しかった。

とはいってもほとんどがTVアニメにて既出の兵器だった筈なのだけれど、出し方や演出が良かったのか、結果的に戦艦の技のバリエーションの多さを実感できた。

そういう印象を視聴者に感じさせる映像テクニックが何なのか、詳しい人解説してくれ。

 

■ストーリー 良点

<導入>

まず最初の戦闘シーンでメカアクションだけでなく、その足元で犠牲になる矮小な人間をしっかり描くことで「ガンダム最新作作品」としての自己紹介を十分にこなした。『ガンダムF91』から始まり『ガンダムNT』『閃光のハサウェイ』などの最近の路線をしっかりと継承していることが示されたことで、本作に対する信頼が生まれた。

やっぱSEED最新作をする前に、2024年冬のガンダム最新作としての顔をするのは大事ですよ。

 

<デスティニープラン>

次にデスティニープランを主材料として出してきたことで、2024年公開アニメとしての最低限の今どきっぽさを確保したことが偉かった。だいたいのオタクは『PSYCHO-PASS (2012年)』を通過しており、メリットとデメリットが絶妙な管理社会に対する態度表明の難しさを理解しているワケで。

SEED DESTINY最終回でのキラの決断は正しかったのか、という問題提起はとっつきやすかった。

なんなら『PSYCHO-PASS』の先駆けをSEED DESTINYはしていたんだと、遡って評価が高まってしまう。そうか?

まぁ管理社会のディティールの細やかさは『PSYCHO-PASS』の方が圧倒的なのではあるが。

 

<敗北展開>

そして主要キャラをボコボコに敗北させる展開を早々に持ってきた所が良かった。

キラを初めとするメインキャラやメインメカたちの、強さや勝利を無邪気に信じていた自分というものを自覚させ、その盲信を破壊されたのは体験として刺激的だった。

多少は押される展開はそりゃあるとは思っていたけれど、そこまで負けるんだ。

敵ブラックナイトのアクション自体は卑怯戦術でゴリ押してくるようなものでもなかったので、本当に実力差で負けたという衝撃が強かった。

観客の身が引き締まるね。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の冒頭での、マリオが粗雑に扱われる様子を見せられた時ぐらいに身が引き締まりました。

 

<恋愛問題とデスティニープランの語り直し>

キラとラクスそして新キャラ・タオとの間で恋愛問題を発生させたのも良かった。

というのもこの三者の恋愛問題を描くことは、デスティニープランの問題点を描くことと等しい。

つまりデスティニープラン下では、ラクスはタオと結ばれることが最適であるとされており、キラと結ばれることは推奨されてはいない。ラクスとタオが接触するたびに高度な精神交感が発生していると思われる描写が何度も繰り返されることからも、デスティニープランによる相性判定はある程度正しいのだろう。

一方キラとラクスの実生活についても、序盤で描かれる通り円満な状態ではないことが描かれている。

思い返せばSEED DESTINY時点でのデスティニープランの肯定/否定に関する議論は、安定と自由を秤に掛けるような概念的な言及にとどまり、実生活への影響といったレベルまでは描けていなかったと記憶している。

前作でも突きつけられたデスティニープランの肯定/否定の選択を、「タオかキラか」「保証の有る結婚生活か無い生活か」という具体例を伴って再提示されたのが、今回のSEED FREEDOMだ。

キラとラクスが今回どのような決断をするのかは劇場にて実際に確かめてほしいが、デスティニープランに関する態度と人生の決断を直結させた本作のストーリーは、SEED DESTINYの分かりにくかった終盤のストーリーを改めて語り直したという意味で、前作から半歩進んだ内容だった。

まあこの言及内容自体はSEED DESTINYでも「デュランダルとタリアの過去の恋愛関係」を使って一瞬言及されていはいるのだが、あっさりすぎて分かりにくかったよね。

 

 

■ストーリー 欠点

・大きな欠点としては、新鮮な着眼点/切り口というものが無かった。前項で言及したデスティニープランの語り直しが半歩新しいくらいで、コズミック・イラ世界を広げるようなストーリーではなかった。あえて類似の他作品を上げるとするなら本作は『STAR WARS EP7』や『TRIGUN Badlands Rumbl』である。

こんな例え方していいのかな……。

こういう雑な他作品言及は誤解を招くので、あんまりやるべきじゃないね。

蛇足ですが筆者はエヴィデンス01を絡めた本格的な宇宙進出を描いたりするのかな、と鑑賞前は期待したりしてました。

機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』のこと、筆者は結構好きなだったりするのでね……。

地球圏なんて狭い所にずっといるから、その閉塞感でお前らずっとイライラしてるんだよ。広い所行ってみなよ。

あるいはコズミック・イラ世界の拡張は外伝漫画のアストレイシリーズに完全に任せたパターンなのかもしれない。ライブラリアンの設定とかヤバすぎるでしょ。

 

・細かい欠点ちすては、ブラックナイトの特殊能力の看破をあるキャラクターが突然することが不満。何をしたかは知らないが、お前はもう確信を持って能力の正体を知っているんだね……。そしてそれを周りも受け入れるんだ…そうなんだ……。

 

■キャラ個別感想

・キラ

バイクとか車を乗り回してるの、工学部出身の機械好きとしてのオリジンを保っていて良いじゃん。

Gのレコンギスタ』のベルリと同じく、キラは一見優秀そうに見えるが実際は失敗や敗北のキャラクターである。

今回の出来事を通して、自分は決して優れた人間ではないことをキラが改めて認めることできたことは、彼の人生にとって凄く良いことだと思う。

 

アスラン

最強はお前だ。

アスランのおかげで、ファーストガンダムの某エピソードは当時の表現が追いついてなかっただけで、めちゃくちゃ凄いシーンだったんだと評価を改めることができたよ。

でもお前ってそんなえっちなキャラだったか?そうだったんだ……。そうかも?

 

・シン

幸せそうで楽しそうだからいいんだけれど、牙を完全に抜かれてしまったな?

お前は本当にそれでいいのか?

デュランダルやレイに依存していた先がキラに変わっただけと思えば、一貫した描写ではあるのかも。

でもお前が「考えていない」人間扱いされることに関しては、ちょっと僕は不満だよ。

シンはシンなりに考えて行動してきたワケじゃんさ……。そんな馬鹿扱いされる人間じゃないだろうよ。

いや、幸せで楽しそうだからいいんだけれどさ。

 

・アグネス

SEEDのあのキャラを2024年にリファインするとこうなるんだ……。絶妙なヘイト管理

を受けていて、非常に技巧的なキャラクターだと思いました。

 

 

■その他小ネタ

・ニコル死亡芸は鉄板化しているが、まさかクルーゼまでその死亡芸の仲間入りをするとはな。

 

・禁止されたハズのニュートロンジャマーミラージュコロイドがほぼ解禁されてるじゃん。治安がまた悪くなったなぁ。

 

・後半に行くほどモビルスーツの性能が凄すぎるけれど、本当に動力は電気バッテリーなのか?なんか物凄い技術革新が起きている気がするから、なんとか面白い技術的言い訳を出してみてほしい。小説版とかで補足されるかなぁ?

 

・ビーム耐性が高いブラックナイトの装甲性能が凄すぎるのだが、どう攻略するのが最適なんだろうか?鉄血のオルフェンズのバルバトスを呼んで、パイロットが気絶するまで鉄塊で殴り続けるのが一番なのだろうか。

 

・これは同窓会お祭り映画要素としての褒め方なのだが、これまでの既存作品のキャラやメカを再登場させる配膳の仕方がとにかく上手かった。

あるときは大画面に映し、あるいは画面端にさりげなく配置し、セリフに混ぜ込み、まさかのタイミングや組み合わせを見せるなど、とにかく様々なタイミングと見せ方で前作要素を可能な限り網羅させていたのは偉かった。

お前がアレにアレしてアレなタイミングで出てくるんだ……という驚きが複数回も。

 

・終盤のシンはプリズムスタァみたいなアクションしていたけれど、あれは当時のTVアニメの表現が追いついてなかっただけで前作からずっとやっていう理解でいいのでしょうか。

 

アウラ女王やラクス母は一体何者だったんだろうか。まぁこれからはコロニーメンデルを絡ませれば無限に敵キャラを作れるようになったね。

 

・筆者は思い出補正から逃れれることがができないが、まったくのガンタム初見者が本作を見たとこに、どういう感想を抱くのか気になる。

 

・今思えばレイ・ザ・バレルはいいキャラしていたので、本作でもなにか言及がほしかったなー。シンもルナマリアもレイのこと今はどう思ってるんだよ。

 

・楽曲も良かったよね。特に終盤のBGMがさ……

 

・本作はいくつか笑いどころがあるのだが、個人的に一番笑いの感情が発生したのがED曲『去り際のロマンティックス』の第一声だった。

だって「最後に歌うよ~」ですよ????

ED入るときに歌うことを事前に断ってくれることってあるんだなと思いました。

「あ、最後に歌ってくれるだ。締めですもんね、どうぞ歌ってください。……。いやぁよろしいお歌ですねぇ」ってなった。